森林保全へ資金循環を 排出量取引の透明性高める 「サステナクラフト」<都の企業とSDGs>

2023年1月15日 06時00分
 二酸化炭素(CO2)を吸収する森林は、地球温暖化の抑制に大きな役割を果たしている。脱炭素に向け、森林保全・再生の事業に資金が循環する仕組みをつくろうとしているのが新興企業のサステナクラフト(千代田区)だ。

自然資源への健全な資金循環を目指しているサステナクラフトの末次浩詩CEO=品川区で

 生物多様性の保全にも欠かせない森林だが、中南米などで減り続けている。住民にとっては森林のまま残すより畜産や農業用に転換したほうがもうかるからだ。この流れを変えるには「外側からのインセンティブ(報酬)が必要」と末次浩詩CEO(38)は語る。
 同社が進めるのが森林由来のカーボンクレジット(排出権)の自主的市場の活性化。そのためにはクレジットの透明性が重要だ。人工衛星による遠隔測定や因果推論の技術を駆使して、森林プロジェクトによる温室効果ガスの吸収・削減量を適正に見積もり、地域の生物多様性の保全や雇用創出の効果も評価している。
 お金で排出量を相殺する取引には批判的な見方もあるが、企業努力で削減しきれない部分に使うのは有効とみる。「誰かが対価を払わない限り、森林減少は止められない」と末次さん。森林保全・再生に取り組む団体と、資金提供の企業・金融機関をつないでいく。
 末次さんは東京大、同大学院で航空宇宙工学、技術経営戦略学をそれぞれ学び、民間企業でデータ分析や人工衛星を活用した洪水などの被災地の特定などに携わった。持続可能性の分野で自身のキャリアを築きたいと起業した。「気候変動は次世代にとって大きなリスク。わが子のために動くのと同じような感覚で、森林保全の事業を支援している」。2人の子を育てる父親の表情が垣間見えた。(押川恵理子)

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